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ソナス ファベール エレクタ・アマトールIII 自宅試聴記

ルネサンスの国イタリアの風を5年ぶりにちょっぴり吹かせようかな、という出来心が起こした事件といえば、


ソナスファベール エレクタ・アマトールIIIの試聴である。期間は3日ほど。


重ねて店頭試聴を希望したはずだが、ふと気がつけば自室に置かれていた。「へぇ~、スピーカーを自宅試聴できるご身分なの?」と問われると答えに窮する。

オーディオ評論家でもない市井のヒトであるから、この自宅試聴は購入前提で販売店は貸し出しているに違いない。実際、使用中の805d3よりもクラシックが良い音で鳴るならば、このエレクタ・アマトールIIIを買うことになる。試聴しないと分からないにしても、気に入ったのに買わない、、という選択肢はない。気に入れば100%購入しなければならない。試聴機の扱いには不慣れではないが、高額なスピーカーを借りることは扱いに大変気を使う。


評論記事やカタログ脳内妄想だけで購入してしまう危険を徹底回避するために、ネット購入をやめて、地元の販売店を懇意にしている。下手をすれば、どうも頭(情報)だけで音楽を聴こうとしている。提灯記事を読めばすぐ影響される。舶来と聞けば「良いに違いない」と盲信する。ソナスにしても、創立者フランコ・ゼンブリンから後継者のパオロ・テツォンに代替わりしたとなれば、音も以前とは違うだろう、、等々、、、頭で勝手に想像してアマトールIIIを聴く。

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先入観を持たずにオーディオは成立しない、なんて言っちゃうと愚かな奴だと思われるだろうが、フランコ・ソナスからパオロ・ソナスになったなら、あの音、あのヴァイオリンの甘い音色はなくなってしまっただろう、という先入観を出来るだけ少なくし、アマトールIIIを試聴しよう。



アマトールIIIは小型スピーカーで極めて扱いやすい。一人で易々と運べるし、移動も至極楽だし、過剰な低域のコントロールで東奔西走する必要もない。この、ひとりで簡単に移動・配置替えさせることができる、という部分こそ、逆戻りオーディオの最重要ポイントである。


B&W805d3は部屋の隅に置かれ、その主役の座をエレクタ・アマトールIIIに譲った。4年前から始まった805d3との日々は、たった3日間ではあるが、いったん保留になった。


当然ながら、805d3をオレ仕様で聴くために選んだアンプ、プレーヤー、電源、ケーブル類、ボード類、ラック、そしてシルヴァンである。805d3だけをエレクタ・アマトールIIIに置き換えた、文字通り「スピーカーが変わっただけ」のほぼ完璧な比較試聴である。言うまでもないが、805d3専用にセットアップされている空間に、単純にアマトールIIIを置いただけなので、アマトールIIIにとっては大変不利であると重々承知している。


ただ、

「早朝(深夜)試聴」

「自分所有のアンプ・プレーヤーシステムで鳴らせる」

「自室という慣れ親しんだルームアコースティック内の試聴」

これらが可能なだけでも嬉しいことこの上ない。


我が家でしかも99%同じ環境下で、気に入っているスピーカーと「購入するかもしれない気になるスピーカー」と所有のスピーカーを比較試聴できるのは実に有難いことである。

新製品スピーカーの自宅試聴は生まれて初めてのことである。販売店に心から感謝している。

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アマトールIIIのカッラーラ・スタンドはスパイクをねじ込むようになっており、スパイク受けと合わせて設置に少々気を使った。またスタンドとスピーカーを2本のネジ、左右計4か所それぞれ留めて固定するのが、底部分で暗くて見辛い(笑)こともあって意外と手間取った。が、なんとか無事設置、試聴を開始した。ただこういう時に限って、家人の野暮用が不思議と続き!?搬入当日、結局試聴を始めたのは夜の9時半から。深夜試聴はまさに自宅試聴の強み。すでに自室のプリアンプC-3850とパワーアンプP-7300、プレーヤーDP-750は半日ほど暖気させていた。


いきなり初っ端からズンズンと低域が鳴り響く。805d3で当分のあいだご無沙汰であった実に数年ぶりの低域の量感に面食らったが、そうそうこれがオーディオの低域だと思い出した。

この記事(リンク参照)にもある通り、エレクタ・アマトールIIIは低域が非常によく出るスピーカーである。べつに疑っていたわけではないが、どうも本当のようだ。実際この豊かな低域を自室で聴くのはとても懐かしい。805d3では逆立ちしても不可能な低域表現である。


比較対象がB&Wというモニター特性のスピーカーだから、ある程度予想通りにしても、この低域の量感の差は非常に大きい。アマトールIIIは、よく弾む心地よい低域を軽やかにキレイに表現する。当然かつてのガルネリ・オマージュ(以下、ガルネリ)でもダブルウーハーのアマティ・オマージュ(以下、アマティ)とも違う、広範囲にすばやく広がる低域を部屋に満たす。この技術と経験からの進歩はすばらしい。ソナス・ファベールの歴史に新たなページを加えるに違いない「アマトールIIIのハイスピードな低域表現」には舌を巻いた。


さて、長文になる前に、インプレを一行で表現すれば、


「ポップス(ヴォーカル)が超高品位に楽しく聴ける、新生ソナス・サウンド」


を奏でたエレクタ・アマトールIIIであった。


アマトールIIIがここまで楽しくポップスを再生できることが分かると、アンプ、プレーヤー類をはじめルームアコースティックの問題よりも最大の原因はスピーカー805d3だと判明した。当然、下馬評でよくある「アキュフェーズアンプはつまらん音色」なんて皆無。アマトールIIIを自室のアキュフェーズセパレートアンプC-3850とP-7300がグイグイとドライブしてポップスをとても心地よく楽しく弾ませるではないか!

アンプのせいではない。スピーカーが問題だったのだ。改めて店頭の802d3で聴いてみても、805d3よりも確かに低域の量感こそふえるが、ヴォーカルのよそよそしさは全く同じである(笑)。あくまでアマトールIIIと805d3の比較でよそよそしい訳であるが。ソナスとB&W、まあ確かに各々の伝統は引き継がれている。アマティでヴォーカルを聴いていた日々が思い出される。いやあれより解像度がはるかに高く、かつ、艶がある。同時にコントロールしやすい低域である。


アマトールIIIは低域がとても心地よく弾むし、キレも大変良い。マイケルジャクソンのアルバム「History」「Dangerous」「Bad」「Thriller」等、ひと通り聞いてみたがいずれも非常に好ましい。調子に乗って、試聴リファレンスであるノラ・ジョーンズのアルバム「Come Away With Me」も聴いてみたが、実に官能的でもある。ヴォーカルを支えるベース音が大変心地良い。アマトールIII+ポップス=FTWである。(突然のチャット語で申し訳なし)805d3は情報量が多い分、バックの繊細なニュアンスがときに過剰に表現される一方、アマトールIIIはポン置き状態であっても、マイケルやノラのヴォーカルが非常にうまく浮かび上がり、バックはほどよくミックスされて引っ込む。なによりもよく弾む低域表現がポップスを完璧に仕上げてくれる。

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さて、次はソナスのオハコ、クラシック再生である。元ガルネリのユーザーとしてソナスファベール社製スピーカーに対するヴァイオリン再生には期待値が極めて高いこと前提で正直に述べたい。


くどいようだが、アマトールIIIは低域がとても良く再生される。しかし小編成やヴァイオリンソロでは低域再生はほとんど不要である。マーラーみたく大編成のオーケストラ、大太鼓やパイプオルガン、コントラバスのうねり、そしてロック、ポップス、打ち込み系を集中的に聴き続けるのであれば低域は大変重要である。同時にファンダメンタルな部分として、低域が豊かになれば倍音がゆたかに再生されるので中高域に音の厚みが出てゆったりと音楽を聴ける。


アマトールIIIのヴァイオリン再生は、ソナス本来のラテン系とも言うべき「明るさ」「ゆったり感」そしてなによりも「大らかさ」が優先された伝統はしっかり継承されている。最終日に気がついたが、パワーを相当入れれば、やや退屈な高域表現を吹き飛ばすサウンドが出る。この傾向は、ガルネリよりも、むしろアマティに近い。残念ながら大音量ハイパワー連続再生からは遠ざかっている。専用室持ちで爆音再生中心ならばアマトールIIIはフロアー型を脅かす潜在能力の持ち主として申し分ない。


アマトールIIIはよく響く、実によく鳴り響くスピーカーである。ピアノ曲を再生させると、平素805d3でいかに微細な部分を聞き続けていたかがよく分かる。微細な部分を聴かせない旨さも巧みである。「そんなにモニター聞きしないで、もっともっと楽しくね!」「シワばかり見ないで、キレイなところをもっとよく見てよ!」という根っからのラテン的スピーカーである。


スピーカーを805d3からアマトールIIIへ換えただけなのに、部屋が変わったかと錯覚するほど響かかわった。アマトールIIIで聴くと部屋中に音が響きまくり充満する。この響く感じも、やはりガルネリよりアマティに近い。それは大きいエンクロージャーのスピーカーが響いているような広がりである。設計の優秀さがあふれている。アマトールIIIのエンクロージャーを軽く叩くと初代アマティやガルネリに比べればあきらかに響きは少なくなっているが「コンコン」と響く。アマティみたくエンクロージャーを叩く位置で微妙に音が変化することは無い。当然ながらスピーカー底部の大理石も「コン」と響く。スタンドの大理石は叩くとかなり響く。ガルネリ、アマティ、そして今回試聴のアマトールIIIは、ツボにハマった時に再現される「楽しさ」という点でも、100%ソナスのスピーカーであり、極めて高品位なスピーカーである。


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まとめ



連日試聴していて気がついたところ


(1)以前使っていたガルネリでもアマティでもそうであったが、このアマトールIIIも、どんどんボリュームを上げてしまう傾向にあった。アマティの時代は業務用パワーアンプを使っていたので、ボリュームを上げて鳴らすしかない!と覚悟していた(笑)。現在は、その業務機よりはるかに高品位で高SNであるアキュフェーズパワーアンプP-7300を使っている。となれば、正直、ソナスファベールのスピーカーは非常にパワー喰いではないだろうか。もしプリメインアンプで鳴らすならパワー部がしっかりしたシステムが必要不可欠であると思う。


(2)805d3に比べてあきらかに高域が滑らかで聴きやすくなったが、その分、高域の伸びが不足している。SACDプレーヤーDP-750を導入後、805d3ではSACDよりもCDの音が良くよく聴いている。しかしアマトールIIIだと、なぜかCDの音が眠く感じる。同時にSACD再生でも当たり外れが大きい。このあたりは伝統的なソナスの性質である。かつて、アマティは巨大な低域エネルギーのコントロール以外には問題を感じなかった一方、ガルネリは高域を伸ばすのに東奔西走した記憶がある。ただし大音量再生だとこの限りではない。


(3)(2)の続きになるが、したがって、全体的にどうも滑らかすぎる音がする。メリハリが少ない。そもそもアキュフェーズアンプなのでそうなのだろうが、805d3だとエッジが立ちすぎる所があるので、抑え気味にコントロールしている、その周辺機器、ケーブル等とアマトールIIIが合わないに違いない。


(4)アマトールIIIの高品位な低域再生であるが、やはりボリュームがある程度大きくする必要がある。小音量再生だと低域表現が大きく損なわれてしまう。せっかくの心地良い低域は、日中専用、パワー連続1W以上入れ続けて得られる快楽である。(805d3だと連続1Wは滅多に使わない)


(5)SPEC社製リアルサウンドプロセッサーRSP-AZ1が不発だった。個性がぶつかり合うというか、アマトールIIIの美質が損なわれるので、アマトール設置の最初の段階で外した。つなぐと全くしっくり来ない。アマトールの個性を削いでしまうように感じた。


(6)クラシックはポン置きでは及第点。しかしポップスをかけると、まるで息を吹き返したみたく歌いはじめる。ポン置きご機嫌ナナメ状態であってもヴォーカルは至福、じつに不思議だ。805d3だと録音の粗が聴こえてしまうノラ・ジョーンズのアルバム「Feel Like Home」なんてアマトールIIIで聞けば、オレダメ部屋でも最高に魅力的である。ついアルバムの最後まで通して聴いてしまうほど聴き入った。ノラのヴォーカルはこれほどセクシーだったのかと再発見。AB級のパワーアンプなのに、まるでA級のような艶である。ハズレだとトコトン外れであるが、当たると強力なまでに聞かせてくれる。そこまでもソナスの伝統は健在である(笑)。


(7)最後に805d3のオレ仕様を外そう、ということで、まずアマトールIIIと相性が悪そうな部分を考えてだして、出費することなく簡単に変更できる箇所に手を加えてみた。


概して、自室ポン置きアマトールIIIは、とにかく元気が足らない!

これじゃダメだ。元ソナスユーザーだからわかる。ソナスはこんなんじゃないんだ。

元気がもっと必要なのだ。「オラにもっとみんなの元気を分けてくれ!」である(笑)。


プリアンプ3850とパワーアンプ7300は共に付属の純正電源ケーブルを使っているが、それを以前アマティで使っていた手製のケーブルに変更。プレーヤーDP-750とプリC-3850の間、プリC-3850とパワーP-7300間のXLRケーブルもアキュフェーズ製からアマティ時代に使っていたスタジオユースのメチャ安ケーブルにすべて変更。


するとガツンと音が飛び出してきた。

5年前この部屋で毎日聴いていたあの懐かしいソナスの音に近づく。しかしあの音よりもはるかにレンジが広く、きめ細かい。そして超速の低域再生である。


ケーブルの影響ははかり知れないが、ここまでやるなら「エイヤ」と壁コンセントも変更(爆)。もう!歌うわ!歌うわ!!このアマトールIIIのヴォーカル再生は超強力である。すさまじい。イタリアンパワーMAXである。アマトールIIIというイタリア現代美人は予想以上にヴォーカルを至福に近い音を奏でる。そう、再生ではない、演奏を奏(かな)ではじめるのだ。ソナスは奏(かな)でてこそ、ソナスであると信じている。しまった!805d3固定で断舎離のため全部売り払った真空管アンプ群、あれらで鳴らしたら、もっとガツンと歌ってくれそう!と思ったが、後の祭り。


間もなく、その辺りで、贅沢な自宅試聴期間が終わる。


by bachcantata | 2020-02-07 23:03 | 試聴記

Mcintosh XRT後は、ソナスファベール・アマティとガルネリを使い分けてイタリアの風を吹かしていた。現在はB&W805d3だけを極めてお気軽に鳴らす逆戻りレコード演奏家


by bachcantata