エージング中の805d3で自宅試聴アキュフェーズE600&E470
2016年 06月 17日
当初からの勝手な「最近のAB級は聴きやすい」という先入観と「多額を費やすとそれがまたスパイラルを巻き起こす」ことへの危惧で、当然ながらE470に決めるだろうと思っていたが、あれでも20万円の差が明白に出るかもしれない、鬼と出るか蛇と出るか、、、。音質の好みは価格では押し計れないが、しかし実際に購入するとなるとまず第一に価格が最重要ポイントになる。E600は70万円、E470は50万円。どちらもオーディオフリークでないならまさに「異常」なほど高額だ。ま、その「異常」論はまた別の機会に論じる事にしたい(笑)。
3日ほど前に届いたB&W805d3でまさにエージング中の状態で、このアキュフェーズのプリメインアンプ2台、E600はA級プリメインアンプ、E470はAB級プリメインアンプの試聴機比較が明白に出来るかであるが、これが意外なほどアッサリと分かった。
さて、まず結論から言おう。E600とE470は20万円の差は「ある」と断言できる。まさにアキュフェーズ。日本のハイエンドオーディオメーカーとして世界にその名を轟かせるだけはある。
インターネット上の「様々な情報」では圧倒的にE470を推薦する内容の文章が、コピーが多い。店舗によってはE600はほぼ無視されていているところもあるくらいだ。そんな状態での自宅比較試聴だっただけに、バイアスが入っている。つまりE470の方が良いに違いないというバイアスだ。
日進月歩の世の中。E470の方がE600より2年も新しい機種。その2年は技術の進歩は相当あるだろう。パソコンの世界などはほとんど数週間で最高機種がゴミになるなんて当然。
しかしである。このオーディオの世界は非常に面白い。古いものが絶対的に低品質、、、というわけではない。
とくに、今回はA級アンプとAB級アンプの比較だけに実に面白い。ま、あと一週間あるのでたっぷりとこのレビューを皮切りに自宅比較試聴を繰り返してゆっくりと決定して行こう。
以下は、比較試聴のメモである。備忘録である。
E600とE470は両方とも内臓オプションボードのDAC40を使ってMACからHifaceTwoproーBuspowerProー同軸ケーブルから本体オプションのDAC40へ直接入力している。
また、E600もE470も同社のクリーン電源PS500より電源供給をする。
E600はあらかじめ2時間ほど暖気させてから試聴した。
E600の第一声はそれほど感動しなかった。E600に切り替える2時間前までに自宅の「売れ残り業務用のアンプ類」で鳴らしていたから、それに耳が慣れていたのだろう。
E600でお決まりの曲を次々に聴いてみた。巷で言われている程、特に高域が強いとは感じない。低域もおだやかだがさほど気にならない。とにかく少し音がこもった感じがした。これが業務用セパレートに耳が慣れていた状態で聴いたE600のファーストインプレッション。
そして、そのまま今度はE470に切り替えた。
第一声、「おお!凄い」となった。音のパワーがまるで違う。ポップスやジャズではパンチがある音で、聴いていて楽しい。プリメインアンプでここまで聴けたら申し分ない。E600だとスピーカーに張り付いていたような鳴り方をしていたが、E470に切り替えた瞬間、スピーカーから音が離れた。パワーの違いかと感じた。やはりこれは予想通りE470にするだろうな、と改めて決意を固めた。これがE470のファーストインプレッション。
そうして、しばらくE470で音楽を聴いていたが、また再びE600に戻す。
今度はクラシックやジャズではなく、当家定番のシンセサイザー曲、打ち込み系をかける。ヴァンゲリスやゲームのサントラである。実はこれが意外と手強いのだ。アンプの粗が強力に出る。
ヴァンゲリスの野生。
これは40年は聴き続けている。父のLPレコードから聴き始めた。私の思い出のアルバム。しばらく聴いていると何だが妙な「雰囲気」を感じはじめた。恐らく何千回も聴いた曲だ。ちょっとの違いが体感として敏感に感じる。それは
浮遊感
である。まるでサラウンドスピーカーを使っているような、いやそれとも違う、音の浮遊感である。温度感とも言えるか。寒暖色であるB&Wのスピーカーから「温かい」音色らしき温度感が味わえる。思わず「ん?なんかこの感じは初めてだぞ」と思いながら、805d3導入後よく聴いているゲーム『The Tiny Bang Story』のサントラを流した。
そして絶句。
一体なんだ、これは!
立体感
そして
緻密感
そして
空気感
それらをE600はサラッと表現した。サントラはmp3の320ビットレート。以前そのゲーム会社のHPよりダウンロードしたものだ。しかしいわゆる圧縮音源。DSDなどの高品位な音質ではないはず。だが、E600で聴いたそのサントラは圧倒的な立体感とまるで顕微鏡でみたような位の細かい音がモザイク画のように見えてくるのである。
そんなはずはない。
きっとE470でもその位は出るはずだと、切り替えて同じサントラの同じ曲をかけた。
・・・・・・・
言葉にならない。
全く違う。
E470に切り替えた瞬間、
立体感は平面化
そして
緻密感は均一化
そして
空気感は演出的
になってしまった。
これって、つまりプリメインアンプの音だよなと納得した。
そうなのである。E470はプリメインアンプなのだ。当然だ。しかしE600は見た目はプリメインアンプなのだが、音は全くセパレートアンプなのだ。大体平素プリメインアンプを使っている人がオーディオショップなどでセパレートアンプを聴かせてもらうと
「いやぁ〜立体感が凄いなぁ、そしてSNが高くなった、、それで情報量なんか凄く、、、」
なんて感じるのだ。まさにE470とE600の差がそれである。E470はまさにプリメインアンプの音であるが、E600はセパレートアンプの音なのだ。
ではどっちが「買い」かはプリメインアンプとしてはE470なのだろう。だってプリメインだから(笑)。それに50万円はハイエンド入門機!?としては安価(笑)である。
A級のアンプは今までも色々使ってきたが、発熱が多い。E600もかなり熱くなる。手放したミュージカルフェディリティーのA1程ではないが、E470に比べるとかなり熱い。
では、お得意の「超小音量再生」の比較試聴をした。57dBでE600と E470を聴き比べ。面白いことに、2機種はパワーが違うのに同じdBでほとんど同じような体感音量だった。しかしである。E600でしばらく聴いていると音量をまだ下げたくなってくる事がしばしば起こったが、E470だと「もうちょっと大きくしたいな」とつい音量を上げてしまう傾向があった。
また小音量再生だと、E600は明らかに高域が強く出てくるが、E470は丸い。つまりあまり出てこない。この差は意外と大きい。弦の音を聴くとその差は歴然とする。パワーがあるE470の方が馬力があるから小音量でも低域が良く出そうに思ったが、意外とE600の方がしっかり鳴る。やはり小音量再生はA級アンプの圧勝。
本日の最後の比較は、ステサンの井上先生の「チェック」を真似てみた。それはアンプのボリューム質感チェックだ。音楽をかけない状態で、ボリュームを絞りきってみる。すると絞りきった所で「コン」という音とともにボリュームが止まる。この「コン」という音のチェックだ。
いやはや、流石はアキュフェーズ。E600とE470はこの音も歴然としている。E600はカタログ通りハイエンドボリュームを使っているだけあって「コトン」という音で本体全体にその音が響かない。しかしE470は「カキン」とややチープな音でしかもその音が本体全体に響く。思わずニヤリとしてしまった。セレクターのロータリースイッチもE600はやや重めだが、E470は軽い。
小生カメラもニコンのD一桁シリーズを愛用するが、D一桁とD三桁との違いは質感、そしてシャッター音、シャッターボタンの質感である。その差は歴然としているわけだ。
このE600とE470はやはり、いや予想以上に、セパレート一体化プリメインアンプといわゆるプリメインアンプであった。
まだまだ、試聴時間が豊富にあるので、今後、明日以降にたっぷりとレビューを続けたく思う。