歌いはじめる
2024年 03月 08日
突如として自室(ウサギ部屋)のB&W804d4が歌い始めた。理由をあれこれ考え続けたが分からない。
スピーカーのエージング(劣化)だろうか、
アンプ類のさらなるエージング(劣化)だろうか、
ケーブル、特に電源ケーブルのエージング(劣化)だろうか、
それとも
他の階、他の部屋で使っている家電をいろいろ買い替えたことによるノイズの変化だろうか、
あるいは
体調が良いから良い音に聴こえるのだろうか、
いやいや結局は
耳のエージング(劣化)だろうか
兎にも角にも、804d4がのびのびと歌っている。
歌うといっても相変わらずジャズは真面目すぎてMinima+Mcintoshセットに勝てないが、クラシック、とくにオーケストラ再生は超高域から低域までよどみなく再生され至福である。ピアノ音楽もアップライトピアノがグランドピアノになったがごとく大きく大きく鳴り響く。
去年はRoonを始めたことに併せてTidalとQobuzでストリーミングにのぼせ上げ、年間でたった1枚のCDしか買わなかった(笑)。だいたいEsotericの限定版SACD以外はここ数年来買っていなかったから、手持ちのわずか3000枚弱のCDライブラリーで余生をこじんまり過ごそうと、ただ衰退の路を歩きはじめていた。そこにきてRoon+Tidal+Qobuzで止めどもなく新譜や全ジャンルの音楽を聴きながしは、音質的犠牲があるにせよ、「我がオーディオ趣味の再起」に大いに役立った。
Tidalに600円、Qobuzに1800円、Roonに2000円毎月支払うことで、ディスクという物理的メディアへの投資額を吸い取られている。毎月2~3枚のCDを買った「つもり」でストリーミングを楽しもう、そう決めていたわけだ。
そこに、この事態である。
とにかく音質差がすさまじい。
これほどまでディスク再生が心地よく、静かで、エネルギッシュで、しなやかで、リアリティーあふれる音で愉しめるようになるとは全く想像していなかった。嬉しい誤算である。この状況下でディスクを買うしかないとのぼせるのは「オーディオ趣味人の性格」だから仕方がない。
先月末から突如として歌いはじめた804d4、それが明確に判ったキッカケは、Roonからのデータ再生音とDP750のディスク再生音、その圧倒的差を804d4が克明に表現しはじめたからだ。
同じ曲を再生して比べる。
大抵はRoon上のQobuz音源の方がビットレートが高い。DP750のディスク再生は通常のCDである場合でも、その差が決定的なのである。言うまでもないが、Roonの音の方が情報量が多い。より緻密でより繊細である場合も多い。その中で静かでしなやかな音はディスク再生しか得られない。その有機的なサウンドにすっかり魅了されたのだ。
Amazon、楽天、ブックオフでSACDを探し続けていたが、ふと以前よくタワーレコードの限定SACDを買っていた事を思い出した。早速20枚ほど買い漁り、聴き貪った。
これは良い。とにかく良い。
ノイズレスのアナログレコードを聴いているような滑らかで心地よいだけでなく、大音量のオーケストラの凄まじいサウンドエネルギーが一切の破綻なく部屋全体にきれいに広がる。
飽和しない。
飽和しないのだ。
C3850のボリューム値から「ー(マイナス)」がとれた状態で全く飽和せずウサギ部屋で静かにきれいに音が広がり続ける。連続15W入れても音の往復ビンタ状態にならず。全く信じられない。どこか壊れてるんじゃないかと不安になるほどである。
これほどの音、もう二度と聴けないだろうと寝る間を惜しんで聴き続けた。
そうなのだ。一度寝て次の日に聴くとあまりの音の悪さにガッカリしたこと数えきれず。良い音が出ている最中、一度寝て翌日になるのが怖い。
いかにその恐怖があるとはいえ、一睡もせず聴き続けることは無謀だから、寝る。
そうして、翌日。
おそるおそる、聴いてみた。
そして驚いた。「同じバランス」なのだ。あり得ない。良い音、それが次の日でも味わえるのだ。こんな体験は今まで一度もなかった。
一度良い音を聴くと、次の日は「もっと良くなっているにちがいないという期待」ゆえに、音が悪く聴こえるのが普通である。良い音を体験し終わるとその体験が足枷となって、より以上の経験を求めてしまうのだ。